短歌演習のために【1】
朝雨のしづくのなかに映りゐるとほい牛車のくるま輪のあさ
撲滅だ、僕の滅するゆくたてを金字に書いて投函をした
貝類にこころの襞をみたされて栄螺すするは海死なすこと
まぼろしはひとつの円〔まる〕さ椀中のはるの蓮池ひとり飲み干す
脚のまに海溝のあるをみならを渚に呼んで海光あはれ
犬だつて振り向くときの一瞬におのれの消える不可思議を知る
巻きのなき萵苣〔ちしや〕のかなしみいつしかに魔力うしなふ魔女もあるかな
タラ芽など木の芽ばかりを口にしてつづける嘘に春の塔建つ
そぞろゆく林中にふと湯気ありて膚に目覚めるいにしへの湯女〔ゆな〕
転じゆく処世たのしき悪の生〔よ〕の白斑紫斑のわたくしだらう
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立教での短歌演習がはじまった。
演習授業ではいつも受講者に課題を出すが、
僕自身もそれに競作で臨む。
ということで久方ぶりに短歌実作を自分にしいた。
まだ調子が出ないなあ。
「手捌き」の域に低回している。
とりあえずこの欄にアップしておく。