月尺
【月尺】
月尺で計るのは
にしんのようなものだ
身の欠き方を知るのだが
れんあいというような語に
これまでくるい狎れて
ひれをやわらかく
どれだけすり減らしたかより
思考をつうじて六腑を
どれだけ寝た海底に忘れたか
そういう放心が計られる
ひとつのいにしえだものね
尾にリボンが巻かれたかどうかも
点火して冷静にしらべる
形状が変であればたたえるので
対象は上の空のようにうかべ
測量者とのあいだでは
うつくしいほねがすけるまで
がんま線を飛ばしあう
計測は手術に似てしまう
おかげで金波銀波なみなみ
魚の旧い悲鳴をつがれ
自分もまた星流にさまよって
一定のにしん度に
なりさがってゆくだろう
ああ、ゆく泳ぎに干満が多い
詩のためにもたされた
月尺がわるいのだ