続・短歌演習傑作選(六月八日、十五日) ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

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続・短歌演習傑作選(六月八日、十五日)

 
 
立教での短歌演習は、手前味噌のようだが
参加者の作歌が佳境に入ってきた。
文体をつぎつぎに確立してゆくさまを
まぶしくもおもう。

六月八日、十五日に提出された秀歌を
以下に記録しておきます




●山本晴佳

どうせなら君がいなけりゃ死ぬくらいロマンチックな体にしてよ


「あと一度 別れる前に してこうよ」 過去にお礼を言うくらいなら



●門司奈大

木製のりんごを下げて歩きますさみしげに泣くので削ります


あかいろのりぼんが欲しいと言う君にぬるいポカリを差し出した夜


あじさいにキスする相手がいますのでちょうちょのブレスレットにさよなら


しゅうまつにばくはつぶつをしかけますどうか千鳥足でお越しを


「カンタンで手軽」を謳うあなたには五分限りのケトルを貸した


いつもよりミルクを混ぜるのが遅くなっているのに気付けば「ドカン!」



●長野怜子

ぬれそぼるひよこが三日月たべたのであしたのよていはなくなりました


空き瓶に草笛のねを閉じ込めて、夏の終わりを待ち侘びる僕。



●中島太郎

立川でピアニカ買って飛び乗って 火星に着いたら口つけてみる


裏庭を鶏頭で埋め尽くしたい 若い庭師ならそう思う



●鈴木寛毅

ベランダにきりぬきにんげんやってきた かぜにさらわれどこかへさよなら


主のいない青いせなかのいすたちにむかって、まずは自己紹介から


まよなかのくるまのかげでこっそりな、あだむといぶをみていませんてば


真夜中のみっつにわかれたぼくのかげ ぼくの体でつながっていたのか


真夜中のすけっちぶっくはひっそりと しろくてまるいをうかびあがらす


がらすまどの中にいるぼくかおがなく、とおくけしきにゆれているだけ。


あじさいのなかを歩くそれだけで つゆのあめにも輪かくがうかぶ。


本日のゆうがたなんだかすんたらず。かかとのない靴はいてたからかな



●坂井 雅

ぬばたまのプラットホームにせまり来る朝(あした)の香りを運ぶ終電


違うんだ狂ってなんかぼくはただこの眩しさを憶えてたいだけ


ぶさいくな女子高生がふいにしたあくびで地球は滅びたのです



●久保真美

顔いろをうかがうことをやめました記念にたらこを丸ごとかじる


体温が1.2度高い世界に君への想いを忘れてきた


君の腕まくらの中今日死んでいった細胞の数を数えてみる


このベッドに本部をおいてあたらしい共通言語がうまれていく


きのうの夜革命起こしたふたりは手を取り合ってニトリに消える


わたしにはパーツが一つ足りないとか考えてたら「チーク塗りすぎ」


ぞうさんのかたちの雲がにせもののいのりをはじき返すのだろう


バスケットゴールに吸い込まれたわたしは丸くなって落ちてきました


女子トイレで気づくと無数のオノマトペに取り囲まれていてくるしい



●福島 遥

とうめいなみどりかざしてアスパラガスこの夏がもう始まっている


さらりさらり風がわたっていく夏は洗濯物にまぎれていたい



●廣野友里恵

幸せが閃光残して横切っていく 鉄の国にも変なことばかり



●相田かほり

少しずつ死んでゆく世界に魅せられて冷たい水をごくごくと飲む


エーテルの冷たさに目をさますならもう許されるような気がして


六月の雨はぬるくて手に汗をにぎり気づいた、裏切りの数



●安藤由貴

タン塩は牛のベロだよ舌がない今日のあなたには教えない



●三村京子

身熱も返すことばも奪はれてわれ短刀か若尾文子の


頭に靄がかかってわたしは塩のよう。こわしてはすぐ固まってゆく


甘えられたことに気付いて怖れても身のギザギザがことを為すらしい


どこまでがジャズでどこからげんじつかわからないから抱かれてみます


どんなに私が球体を見ていたとしてもそちら側からしか伝わらない


ひすてりぃと謂うほどのものじゃありません。白砂のお城こわしてるだけ


解釈の岐れる場所で沐浴す――(昔から竹を割っていたんだ。)


剥がれてる。わたしにずれたわたくしのぎんがみ。風に爛れかけてる


器用ではないはずなのに針穴に立ってる「ここが分岐点です」


あなたを織る声の布まとうわたくしが余計な金属でないこと願う


この私が弱かったから辿り着いた「わかれ道」という小さなオペラに




あ、月曜日は「かいぶつ句会」だった。
「阿部嘉昭ファンサイト」の
句集『馬上』にはその際発表した新作を、
「かいぶつ句会俳句エッセイ集」にはその際発表したエッセイを
それぞれ追加更新しておきました
 
 

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2010年06月16日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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