ゆっくりができない ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

ゆっくりができないのページです。

ゆっくりができない

 
 
【ゆっくりができない】


ゆっくりができない
内在にただおされてゆく
速さのなかにある
地点A、Bが
こまに似て混ざるのに
眼をはじめとした
からだがとろけてゆく
けしの汁がにじむように
だるくしびれてみては
身の方ぼうにちった種が
結実をもどしてきて
めのまえはおもいでにもならない
しらないものをつくっている
バス最前席にのったぼくは
ポンプのまものだ
水おとをたてているので
いずればれるだろう
 
 

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2010年09月10日 現代詩 トラックバック(0) コメント(1)

今週は女房の海外出張を「いいこと」に
自分でもあきれるほど本を読んだ。
夏休みに何か登頂記録めいたものを
うちたてたいというのぞみがあったのだろう。

読んだ本はみな良い本だった。

原克『美女と機械』
原克『気分はサイボーグ』
原克『身体補完計画』
浜田優『ある街の観察』
辻征夫『ゴーシュの記憶』
草森紳一『文字の大陸 汚穢の大陸』
草森紳一『中国名言集』
平岡正明『文庫はこう読め!』
福田和夫『勇気ある鳥』

速読の感覚が身体に充填されて
なにか妄想のひろがってくる危機まであって
それを上の詩篇に書いた。

こんなことは週明けからはしていられない。
後期授業の準備のため、
石川淳を舐めるように読んでゆかなくては。

小池昌代さんには
『コルカタ』朔太郎賞受賞にたいし
おめでとうメールを打った。
返信がきて、選考は「もめたらしいのよ」と
つづられていた。
名誉を得ても大変さはかわらない。

読書三昧でハイになって
酔っ払ってネットの古書注文をした。
こまかい記載の読み落としの連続。

『土星とメランコリー』は「函欠」だった。
函のあるなしで価格が一万円ちがっていたのを
うっかり「安い」と飛びついたわけで
確認のメールがきて迷った。
ようするに函が一万円というのは法外なのだから
えいやっと買ってしまえばいいのだけど
記憶にあるあの本のたたずまいは
晶文社豪華本特有の「函が命」だったのだ。
けっきょく断りの返信を入れる。

三橋聡の詩集として購入したつもりの本は
三橋聡装丁の詩集だった。
紫陽社刊の詩集には
そういう事例がいくつかあるらしい。
これも僕の早とちりなのだが
何かの縁、と、こちらは相談のうえ返品しなかった。

菊池千里『赤頭巾ちゃんへの私的ディテール』(78)。
詩をみると、松下育男さんと交友のあったひととわかる。
名前からも詩風からも男女の区別がわからない。

最初に掲載された詩篇が超越的に良い。
以下、「早とちり買い」を記念して転記――



【晴れた日】
菊池千里


半裸の月をかかえ込んで、老人のように、あなたは今、
光にうすまってゆくのだから、薄い血すれすれに囁きか
けるあなたの声は、もう私には聴こえない。

不慣れな風のように、希望が又、左右を間違えて通り過
ぎる。晴れた日あなたは、例えば写実的に街を歩いてい
る。そして時には、たくさんの人影といっしょに、どこ
か遠い所にまで複写されてゆく。

だから晴れた日街を歩きながら、あなたはふと考えてい
るのでしょう。光の、その鋭角の三拍子で、戦争が始ま
る日のことを。あるいは時間で凹んだ空から、ふいに左
ききの雨が降りだす日のことを。

晴れた日、
あなたはたぶん何かの表面だ。
永遠というのではなく
けれども晴れた日、
あなたは何かとても長いものだ。
 

2010年09月10日 阿部嘉昭 URL 編集












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