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額縁 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

額縁のページです。

額縁

 
 
【額縁】


ゆっくりと読む本の、ゆっくりさを許容するというよりもゆっく
りさをしずかにこちらへとあずけてくる感覚は、どこかがひかり
の悲哀にみちている。そこでは字面のとおくがゆれていて、その
はるかな眺望のなかでは自分の孤独までが置きざりにされる。あ
るいは文字の連続にたいして自分の連続のほうが遅いとかんがえ
るときも、従順さであるよりも意味の間隔に自分が参画すること
のほうがもとめられていて、じっさい本に横たわっている謙譲に
は、積極性ではなしに自分の無物がつねに法則として差し向けら
れると知ることのようだ。そこには内心の声が図書館の内でそう
であるようには渦巻いておらず、声のとぎれのほうがなにかへの
見惚れの時にただ対応している。方向とひかり。もっというと修
辞上のたたみかけの不在が、読みながら中断を読むという別次元
で読みを着々とふやして、そこでは本の同定性すらも意味をなさ
なくなる。読むことは放心によっていったん沈められ、読みの勃
興も自分の水面に石をなげたときの波紋に似てつぎつぎに消えて
ゆくが、中間性としてある本ではあたかもそうした模様のほうを
読んでいるかのようで、それが見惚れとなって読みをことさら遅
くさせる。遅滞のほうが競争で勝つ、といった、本と読みのせめ
ぎのなかでうかびあがるのは、それでも怪物的なものだ。これら
が人生とか感覚とかと呼ばれる。やっと到来するものを書くのは
いつでも或るときの吐息だということ、これらが心中、銀色の額
縁までほどこされて、ただ人生とか感覚とかと畏怖的に呼ばれる。
 
 

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2010年10月16日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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