パパイア ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

パパイアのページです。

パパイア

 
 
【パパイア】


大楡のもとで、視覚への妙薬として、なにかみたことのない青い野
菜を売る者がいる。香りをみるべきものならたしかにそんな外見を
しているだろうと、些少の鐚でそれをあがなう。小脇への抱きごこ
ちを買ったのだともいえる。おとなの夢をみながら畝をかえろうと
した途端、うしろから声をかけられる。自分は地獄からかえってき
たのだという。還相。もどってきたものほど、いつもいるものにも
ましてさらに歓待すべきだと、わたしもまた野菜売りのもとへかえ
る。尊厳ととおい地獄の報告を聴くこともなく、そのまま対峙する
十年が経った。かかえていた不可思議の野菜は、香りとなって、わ
たしの胸もとから消えつづけた。消えたのではない、消えつづけた。
 
 

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2010年10月27日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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