鳥
【鳥】
滂沱のひとがやってきて
ぼくの手にもつ珠玉を
釣果なしの昔へながしてゆく
さかなのおもかげが魚影だとして
浪をみる視線を胸におくと
たちまち眼下の海までよごれ
いろとりどりの藻が一杯
そんなものに埠頭をかこまれて
よくぼうを抱えこむ枠組みで
もうとぶほかなくなる
墓のおおい雨のみなとまち
滂沱のひとは墓所の一角から
その一身をあふれさせて
おまえは泣かないことを泣けと
ぼくのかげのなかでいう
そのかげがぼくの
全身よりおおきくにじみ
つつまれてしまって
そいつがくらい真昼にまでなるとは
ちらばりきる葉裏の
しろい恨みにとりどういうことか
ぼくはただながされることで
あわい飛翔の幅になり
ろうそくをあがなうこころを
まひるまにしてともされる
つぐみのいろだ
汀では渇仰のひととすれちがい
ぼくの描く線を羽毛にされる
バーみすず、バーみずのえ
ねむりゆくためあたまのなかに
鼓膜ほどの巣があっても
浮木をふくみ嘴がかすんでしまう
とおく鳴管から野笛がふかれている
みおろす水はいまどこだろう