立教演習連句A班完成!
●連句旧A班
1 秋雨に路傍の澱は霞みゆく 松井利裕
2 開く芙蓉に明くる夜を見ゆ 門司奈大
3 鳥獣もこぞり出で来て愛づる月 三村京子
4 団子の串にたかるのは誰そ 中川達矢
5 幾年の夢滴らす籠枕 長野怜子
6 息継ぎもせず夏草掻いて 松井利裕
7 君を待つ夜ごと馬酔木の花咲かす 門司奈大
8 手にて田螺をもて遊ぶ稚児 三村京子
9 芹摘みて帰るあぜみち水匂ふ 中川達矢
10 無に戻らんと末黒野を刈る 長野怜子
11 一心に壁を眺むる猫の目見 松井利裕
12 小春日和の窓辺に眠る 門司奈大
13 あばら屋の朝寒に発つ宿り人 三村京子
14 天高き日はをちこちに馬 中川達矢
15 嘶きと手綱軋む音呼ぶ月よ 長野怜子
16 胸に頬あて玉繭のなか 松井利裕
17 後朝の我が身のごとく花ちりて 門司奈大
18 遠足バスを待たず帰れり 三村京子
19 雪代にそつと寄り添ふか弱き手 中川達矢
20 黒髪を編む佐保姫何処 長野怜子
21 フエンスを鳴らす白球の大仰なる 松井利裕
22 氷菓噛む子の頬に影落つ 門司奈大
23 家遠く革靴もて踏む霜ばしら 三村京子
24 襖の向かう香る屠蘇酒 中川達矢
25 宵も過ぎ隅の衣服は火恋しと 長野怜子
26 魂迎へする他所の戸に入り 松井利裕
27 椋鳥の一羽が群れを離れをり 門司奈大
28 くわりんの実落ち色硝子見ゆ 三村京子
29 濁りみづ場にとどまりて月眺む 中川達矢
30 純白の照る葱〔ねぶか〕揺蕩ふ 長野怜子
31 年輪数ふれば咳〔しはぶき〕も遠く 松井利裕
32 サイネリア抱く祖母のまなざし 門司奈大
33 船人の見ゆる入り江に海市たつ 三村京子
34 埃飛ばして風光る日々 中川達矢
35 座る身の寂びれを包む花衣 長野怜子
36 翁ねむりて春野に染まる 松井利裕
●
つつげて満尾したA班の歌仙をアップ。
最後の挙句で松井くんが呻吟をくりかえしたが、
無事、「おきな」の芽出度い語がみちびかれて
一座の祝言となった。
恋句待ちのめぐりあわせで
門司さんが妖艶句を立て続けに付ける流れとなった。
それで《君を待つ夜ごと馬酔木の花咲かす》など
びっくりするような句が出現。
それを受ける三村さんの切りかえしもいい感じで、
松井くんという起爆剤を抱えつつ
連句A班は流麗なながれに終始したとおもう。
松井くんの31は破調だが
漢文調のリズムをもつ17音で、よしとした。
授業中、もっとも直し要請のかかったのが
中川くんだろうか。
かれは詩がうまく、
その類推で句を詠むので、
二物衝突によってうまれるべき空間のひろがりが
ややもすると流麗のみにながれてしまう。
授業中に苦闘するかれのすがたが微笑ましかった。
むろんその結果できた14の短句など絶品。
総じては、35の花句と36の挙句のやりとりが素晴らしい。
「寂びれの身」は誰、という謎かけに
「翁」という答が出て、
35が異なる女装を詠んだ奇想句という逆証を受けた恰好。
そういう機知こそ、歌仙の醍醐味だろう。