きんいろから紫にかわる別れ
【きんいろから紫にかわる別れ】
南をさまよっていたころの
あるみちたりたひとときには
壁も柵もきんいろをみな刷いて
わたしをとりまく幻獣の数かずも
くれよんの輪郭をぼかしていった
みんなという単位でずっと
色のかわる空を見上げた気がする
すーぷのようなわかさだった
こわれた腕輪をじゃらつかせて
ひかりにただれた腕をかわすと
勝敗も愛も同時にころがって
他人の他人であることに
わたしは歯止めをかけなかった
たいせつにする者はみな
きれいに添い寝の範囲にあった
すーぷのようなわかさだった
けれど運命が北にむかい
知恵が包帯になってくると
ともにあるくひとみなも
だんだんただの音になってくる
木管とはからだを木にして
きえてゆく香りを鳴らすこと
おーぼえを吹く場を樹下として
すーぷのようなわかさだった
おんなのためにつかったカネを
死んだこどもとかぞえては
やがて眼のまえに夜の浪をみる
あきらかなものはあきらかな姿など
していないから触れてきたのだ
法則をまちがえたともおもわないが
やせたからだに情愛があまった
すーぷのようなわかさだった
とし老いて辞去のしかたが
へたになるなんてなんの逆説
風雨よけの服をぼろぼろに
そのテーブルには気配も置いて
ただひとの死角を去ってゆく
わたしの歌のあらゆる鎖が
わたしなきあとをゆれるだろう
すーぷのようなわかさだった