風呂場の椅子 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

風呂場の椅子のページです。

風呂場の椅子

 
 
【風呂場の椅子】


水に侵食された地形の
きたならしさをおもった
午後のからだはおもうにまかせず
くらさの世系にかこまれる
あげくの黄金風呂
いっときの中立のために
得た紫もなんのむらさきだ
かもめの鳥影にかさなるよう
水中にへのこをただよわせ
やがて背丈だけが
王侯のように納棺大となる
えきたいがあふれてきて
よこたえる全身もなんの岬だ
おんなのしるしに似たちくびが
くらい湯殿世界にあかりして
ごくわずかにぬれると
追憶のおもさにへしおれていた
あの世情のなかの連結が
のっぽたちを真似てあるきだす
後の世のことはすでにわかる
脱いで着て、脱いで着て
そのなかに性愛がまきこまれる
音楽の魔的な反復誘惑から
ともにある者が奏かれねばならず
その一斉の速度が花ある流行だろう
粉よりかるい紛失物がいっぱい
立つ等身大の墓とよばれたが
そうあってはたれとも押韻を結べず
単語だけが組閣されてしまう
詩篇的にぽつんとあるのは
あすへ延長される例題が
例題のかぎりにおさまっているためだ
ずっとしぐさだけでだまっていたが
脱いで着ているながれの眺めに
ほねばった海浜通りをおもいえがく
全長になった自分のつぎには
ぼろきれの洗濯もあるだろう
それでも風呂場になぜものものしく
椅子が設置され照らされていたかを
それらは理解しないだろう
しぐさを湯浴め、という例題がだされ
とけるように湯にいた者の
こわいほどの自分へのちかさを
それらはまるで哀しまないだろう
そうみずからに語り外へでると
からだを拭くために
湯にいたともわかってしまう




井坂洋子さん「海浜通り」へのオマージュ
 
 

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2011年01月12日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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