好きな短詩篇ふたつ
1【なだれ】
井伏鱒二
峯の雪が裂け
雪がなだれる
そのなだれに
熊が乗つてゐる
あぐらをかき
安閑と
茛をすふやうな恰好で
そこに一ぴき熊がゐる
(『厄除け詩集』より)
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2【ヒトごと】
阿部恭久
ある段に
洗濯をする女の白い脛を見て
落っこちた仙人の話がある
彼、「大和の国、吉野郡の竜門寺にこもって
仙法の修業をし飛行の術を習得したという。」
たいへんに努力家だったのだ
(『恋よりふるい』より)
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詩はやっぱり、しなやかでなくちゃ。
ちなみに、井伏詩篇の「茛」は「たばこ」