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歌手 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

歌手のページです。

歌手

 
 
【歌手】


鰭の部分に浪をあつめすぎたようで
風景にはこいびとになってしまう。
あやかるように傷む腕をあげて
空のカーテンをひきずりおろすとき
とうめいなひかりの籠にはいってくる
えがたい鮫の二、三にんと蠕動。
こんなふうに橋の手すりを殖えて
日傘をもつ顔かげのあゆみは
うきくさのあらわれるけしきまで
まぶたのうらへ散らしてゆくだろう。
円形からわずかにきざしてくる楕円なら
分裂しだした中心がどこかにある。
はなれることがわすれないおもかげだと
距離をもつ水仙と舟が眼下にゆれて
みた、星をちりばめた水面のへこみを。
そこらあたりから世界がぶりかえすので
とまらないすべりをとどめるために
ボタン穴へサマリアの草を挿すと
案の定ゆきだおれている旧弊もあって
この善心がふしだらな添い寝を決意する。
愛着の出どころは身の銀貨だって。
ながれている浪に浪を全うさせるなら
さきの割れてゆく輪唱でいいのに。
さかなを見下ろし唄うひととなったが
それがふきあげにもみえただろうか。
下という方向があって砕けてゆくだけだ。
 
 

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2011年02月25日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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