かなしい顔 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

かなしい顔のページです。

かなしい顔

 
 
【かなしい顔】


もしそこに塔があれば
塔へ大きく架けられた者も
ていねいに降ろされて
しずかに哀悼されただろうに。
塔のないいまでは
くだかれた建屋の隙間へ
ただ放水がつづけられ
架けられる者が姿を現すよう
ひたすら予感が用いられるだけだ。
こうした予感の使用には
からだがのろのろ付帯してゆき
その気の遠くなる手続きが
一歩一歩のなかに踏みしめられる。
あれら放射線防護服の
みずからをも縛る堅牢さは
おこないの砦となって
おこないの不如意を
おくれて裏打ちしつづけた。
けれどやがて塔は建つだろう、
艱難がしずめられたとき
眼にみえない形式で。
そこへ架けられる者が
個々を綜合されたことで
どんなに哀しい表情をうかべているか
それをただ個々人より前に
逆ピエタとしてしめすために
ひとつの大きな顔を架けつづける
その塔は建つだろう。
 
 

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2011年03月20日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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