大音楽
【大音楽】
教室というべきところの一隅に
しずかにあおく海面をたたえていた
あの場所は、あの姿は、あの瞳はもういない
海が海面をながしてしまい
かつてはおもかげを載せていた
あれら椅子だけが椅子として無惨にのこっている
そのことの意味は
大音楽が感覚をとおりぬけ耳を洗ったということ
あれら耳が消失者・残留者の人数分だけ
陥没をめぐるように立っているあの場所は
たとえきょう輝いていようと
その後の教室とただ呼ばれ消えてゆくだろう
瓦礫に船が刺さっているのは
あらゆるこころの教室で、それが局所だ
けれどそのつらい刺さりは耳があつまれば
はじまりのかたちすらなすかもしれない