半減期
【半減期】
自殺より少ないものはない
火葬場をさがしているのだから
死だってその容量はさらに大きい
だからぼくらは
その少なさをかろやかな奇貨として
放射線のついた野菜をさがすのに
市場にはそれ以外のないもののほうが満杯で
みずからえらんでほろびることはすでに
権力の奥から禁じられているようだ
ぶぜんとしてまなざしを遠くにむけると
波に乗ってやってくる海の聖者はいて
彼の甲状腺が星のようにみのっている
地球と物質のしるし、だそうだ
さしだされた彼のただれた手をにぎれば
またも音楽的な確信がいやましにつよまる
《自殺より少ないものはない》
ただ乳児と乳牛がすくわれればいい
半減期がかずかずあることを
もともと表していたのも
波によってつくられたぼくら、だったそうだ